トップ>KTRニュース>第45回「有限要素法(ゆうげんようそほう)<FEM>」について
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今回の「有限要素法(ゆうげんようそほう)」の内容は難しいところがあると思います。
なぜ、「有限要素法(ゆうげんようそほう)」について説明をしようとしているのかといえば、「有限要素法(ゆうげんようそほう)」は非常に有用であるからです。
それでは、「有限要素法」について説明して行きます。
(1)<有限要素法(ゆうげんようそほう)とはなにか>
英語では
Finite Element Mehtod FEM(頭文字を取って、フェムと言う)
ファイネット エレメント メソッド
日本語では、英語のとうり、Finite(有限)のElement(要素)のMehtod(方法)です。
まず最初に強調したいことは、「有限要素法」は非常に有用であると言うことです。
「有限要素法」を学んで、活用するまでにはかなりの時間と努力が必要です。
それを乗り越えて、活用出来るようになれば、非常に役にたちます。
例えが違うかもしれませんが、英語を学ぶようなものだと思います。
今日コンピュータが非常に発達して、なおかつ安くなっています。そのため一昔前までは高いソフトで高いコンピューターでしか使えなかったものが、今では、安い有限要素法のソフトと普通に使っているパソコンで有限要素法を使うことが出来るようになりました。
それなのに、なぜ有限要素法が一般的に使われていないのでしょうか。
それは、有限要素法の理論はかなり専門的で難しいす。微分方程式など一般の人が聞いただけで難しいと思うような内容です。
中身は難しくても、使い方さえ知ればある程度活用できます。
例としてテレビを考えてみます。テレビはどうして映るのでしょうか。
テレビの映る原理はほとんどの人は知りません。でもほとんどの人は毎日テレビを見て楽しんでいます。
「有限要素法」を、テレビのように使って役立てていただきたいと思います。
(2)<有限要素法は何に使えるか>
まず、具体的に有限要素法は何に使えるのでしょうか。
有限要素法の代表的な使われかたは構造解析(こうぞうかいせき)と言われるものに使われます。
構造解析という言葉も難し言葉です。簡単に言えば建物とか構造物が使用中に壊れないように材料をどのように組み合わせて作ればよいかを事前に考えることです。
いわゆる設計と言われる作業です。
アメリカのNASA
(アメリカ航空宇宙局:the National Aeronautic and Space Adoministration)
(ナサ)が、宇宙開発の過程で、ロケットや月探査船などを設計するに当たって利用し始めました。
その後、飛行機や車、船、建物などに利用範囲が広がりました。
建物など、構造が大きくなると人が手で強度計算を行うのは不可能になってきます。
有限要素法は応力解析だけでなく、樹脂のインジェクションの流動解析、空調した室内の熱伝導解析、磁気の電磁場解析、振動解析等色んな分野で使われています。
(3)<有限要素法の具体的な手順>
それでは、有限要素法を構造解析に使う場合を、順に説明いたします。
(4)<有限要素法の代表的なプログラム>
有限要素法の代表的なプログラムを紹介いたします。
これらは、レンタルやリースで手に入れることができます。
プリ、ポストウエア(入力やメシュ切り、出力のコンター図などを行う)
- Patran
- Marc Mentat
- ABAQUS/CAE
計算ソフトウエア(実際の計算ソフト)
- Nastrann(ナストラン)
- ABAQUS(アバカス)
- ANSYS(アンシス)
(5)<有限要素法の企業への導入>
有限要素法を企業で活用する場合は、担当者の教育と導入後の研修が必要です。
また、複数の担当者が、お互いに情報交換して共に習熟して行くことが必要です。
簡単な例題から初めて、使い勝手を習得してから、自社の問題を解くようにして行く必要があります。
また、ソフトメーカーの講習や、指導がどうしても必要になります。
有限要素法の導入は、単に設計業務の改善だけでなく、広く製造や品質保証の向上にも役立ちます。
また、データーが残るので、あとの人への引き継ぎもやりやすくなります。
(6)<有限要素法の出力内容>
有限要素法で、強度計算を行った場合、普通の出力として、コンター図(等高線)が書かれます。
強度計算の場合は内部応力のコンター図が普通です。
天気予報で、気圧の図が良く出てきます。気圧の等しい所を結んだ線です。あと、地図などで山の同じ高さを結んだ線(等高線)などがあります。
内部応力は見ることができません。座標ごとにその値を出すことはできますが、数字を見ただけでは全体のイメージを掴むことが難しです。図にすれば一目でわかります。
あと、温度分布などもよく温度のコンター図が描かれます。
強度計算の応力のコンター図を見れば、どこが応力が高いかすぐに分かります。その応力がその材料の許容応力と比べて小さいのか、大きいのか判断ができます。
もし、許容応力より大きければ、材料の厚みを増やすとか、全体の構造を変えるとかをしなければなりません。
(7)<有限要素法と材料力学>
有限要素法でコンピューターを使用して構造計算する方法は、中身がブラックボックスになってしまいます。
求めようとする物体をコンピューターの中でモデルを作り、それをメッシュで切って座標を入力して、外力や拘束条件や材料定数を入力すれば、後はコンピューターが計算してくれて、結果がでます。
コンピューターの中でどの様に計算されているのかは、ほとんどの人は知りません。
コンピューターの計算のところはブラックボックス(黒い箱)になっています。
余談ですが、このブラックボックスとは素晴らしい言葉です。身近な所ではテレビの中身もブラックボックスです。ほとんどの人はどうしてテレビが映るのか知りません。
ただ、チャンネルを変えたり、音を大きくするのは出来ますが、なぜチャンネルを変えたら、画面が変わるのかはしりません。
このように、中身が良く分からないが操作は出来ると言う物に取り囲まれて生活しています。
有限要素法もよっぽどの専門家でないと、計算の式は知りません。
ただ、使うことが出来るだけです。
このように、非常に便利になった反面、計算した結果の検証が出来なくなっています。
そこで、材料力学の知識が必要になってきます。
ただ、材料力学で計算器を使って計算できる物は、単純な直方体とか、丸棒みたいな形状で、なおかつ加わる外力も単純な場合だけです。
でも、材料力学を知っていれば、有限要素法で解いた結果の妥当性をある程度判断することができます。
逆に言うと、材料力学を知らないと、有限要素法を使うことが出来ないと考えられます。
有限要素法の基礎として、材料力学は必須のものだと言えます。
(8)<材料力学の例としてフック(ひっかける物)>
材料力学の計算例として、フックの強度計算を考えてみます。
下の図のように、天井にフックを固定して、フックの先に荷重をぶら下げます。
このフックは10kgの荷重がかかった場合に破壊しないでしょうか。
材料は鋼(鉄)で、断面積は4c㎡なので、10kgでは破壊しないと考えられます。
それでは、荷重を20kg、30kgと順に増やしていった場合、何kgまでもつのでしょうか。
100kgでしょうか。200kgでしょうか。また、どの部分で破壊するのでしょうか。
フックに荷重を載せた場合、フック全体に同じように応力がかかっているわけではありません。
このフックに荷重がかかると見た目ではわかりませんが各部分にヒズミ(歪み:小さな変形)ができます。ヒズミとは材料の微小な変形です。この微小な変形量に比例して部材に応力というもなが発生します。
ヒズミはこのフックの中で同じようには発生しません。場所により違ってきます。
このヒズミの一番大きい所が破壊する場所です。
ヒズミと応力は比例しますので、ヒズミから応力を求めて、この応力がこの材料の許容応力より小さければ、安全と判断します。
上図のような形状であれば、公式を使って手で計算できます。
(9)<材料力学の例として、棒の中央に荷重をかける>
次は、棒の中央に荷重をかける場合の強度計算です。
棒の中央は大きくヒズミますが、支点の所の部材はほとんどヒズミません。
それで、荷重が大きすぎた場合はかならず、棒の中央が折れます。
支点の所で折れることはありません。
中央のモーメントが一番大きいので、折れる場合は中央で折れる
(モーメントの大きいところがヒズミが大きい)
(10)<有限要素法の進め方>
上図の例は、構造が非常に簡単な場合です。
これより構造が複雑になると、手計算ではできません。
「有限要素法」のプログラムを用いて、モデルの座標や支持点の座標や境界条件や材料定数および外力を入力して、材料全体の各場所のヒズミとそれを元にした応力が求めます。
実際には物体を、単純な形状で要素(小さな部分)に分割して、その1つ1つの要素(小さな部分)の特性を、数学的な方程式を用いて、近似的に表現します。
この単純な方程式を組み合わせて、すべての方程式が成立する解を求めることによって、全体の挙動を求めようとするものです。
<有限要素法の例題>
図のように、板の中心に丸穴が開いた物の、引張の強度計算を有限要素法で計算する場合を考えます。
上下、左右対称なので、1/4カットしたもので計算します。
まず、メシュで切って、各交点の座標を入力します。
このメシュ切りは大変に手間です。また交点の座標を入力するのも手数がかかります。
今は、プリプログラムで自動的にメシュ切りと座標入力をやってくれます。
あとは、この構造物の物理定数、拘束条件、外力を入力して、計算をさせます。
出力として、各場所の応力が計算されて、コンター図が描かれ、どこが応力が高いか、それは許容範囲に入っているかを確認します。
(11)<まとめ>
宇宙,航空関係でつかわれた有限要素法が年数を重ねるにつれて、裾野が広がってきました。
ソフト費用の低廉化とパソコンの機能向上により、有限要素法がますます身近なものになりつつあります。
習得にかかる時間と費用の壁もだんだん低くなりつつあります。
設計業務には必需品になってきています。
開発の高度化、短縮化、そして試験費用の削減、試験時間の短縮などの課題に答える大きなスキルだと思います。
この有限要素法のメリットをぜひ多くの人にご理解していただきたいと思います。
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