トップ>KTRニュース>第47回「REACH(リーチ)」とは何か 3
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(1)<リーチとは>
リーチは、21世紀への持続可能な開発を目指す地球規模の行動計画の一環として制定されたものです。
人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を2020年までに最小化する「ヨハネスブルグ実施計画」の採択に関する世界首脳会議が開かれました。
さらに、これらを具体化するための戦略的アプローチ「SAICM」の選択など、化学物質を適切に管理するための国際的枠組みの進展のもとに、EUが決めた法律です。
それでは、欧州の新しい化学品規制(REACH規制)の内容について説明します。
Registration Evaluation Authorisation and Restriction of Chemicals
(2)<日本への影響>
それでは、このリーチが日本に及ぼす影響について説明します。
日本からEUに輸出する場合は、REACH規制が求める4つの責務を果たさなければ、EU域内での化学品の製造、上市または使用を行うことはできません。
4つの責務とは、次の4つです。
日本から欧州に化学物質を輸出する業者の4つの義務
(1)登録(Registration)する義務 | |
新規化学物質か既存化学物質かを問わずに、年間の製造輸出量が1トンを越える 場合は、化学物質を欧州化学庁に登録が必要がある。 | |
(2)評価(Evaluation)される義務 | |
欧州化学庁に提出された化学物質安全性報告書(CSR)の内容を行政庁が評価し、 必要に応じて追試験の実施又は追加情報を要求される。 | |
(3)認可(Authorisation)される義務 | |
高懸念物質(SVHC)を使用するには、欧州化学庁に申請して認可を得る必要がある。 | |
(4)制限(Restrictio)される義務 | |
行政庁が実施したリスク評価の結果、リスク軽減措置が必要な場合には、製造、上市、 使用が制限される。 |
(3)<認可対象物質:SVHC(高懸念物質)の説明>
リーチの中で、最も大事なことは、SVHC(高懸念物質:こうけねんぶっしつ)の規制です。
SVHC(高懸念物質)とは、毒性があるか、または自然界で分解されにくい物質です。
SVHC(エスブイエッチシ)と言われます。
S:substance(物質)
V:very(大変)
H:high(高い)
C:concern(懸念される)
の頭文字を取ったものです。SVHC(高懸念物質)は何種類かに分類されます。代表的なものには次のような
物があります。
認可対象物質は毒性があるか、難分解性の物質が認可対象物質になっています。
この場合、使用が認可される条件としては
1,安全性がより高い代替物質への切り替えが困難である
2,かつ、産業活動上使用が不可避であるもの
3,この承認を受けるためには、別物質への代替え化検討の計画書が必要である
現在、SVHC(高懸念物質)は約1500物質ぐらいあると言われています。
(4)<指定された認可対象物質:SVHC(高懸念物質)>
欧州化学庁で指定された認可対象物質は、順次公開されます。
(第一次) 2008年10月28日 | ||
1 | ジクロロコバルト(Ⅱ) | |
2 | 重クロム酸二ナトリウム二水和物 | |
3 | 五酸化二ヒ素 | |
4 | 三酸化二ヒ素 | |
5 | ひ酸水素鉛 | |
6 | ひ酸トリエチル | |
7 | フタル酸ジブチル | |
8 | フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) | |
9 | フタル酸ベンジルブチル | |
10 | アントラセン | |
11 | ビス(トリブチルスタンニン)オキシド | |
12 | ムスクキシレン | |
13 | ヘキサブロモシクロデカン | |
14 | 一部塩化パラフイン(C10~C13) | |
15 | 4,4’-メチレンビスアニリン | |
(第二次) 2010年1月13日 | ||
16 | 1 | 2,4-ジニトロトルエン |
17 | 2 | アントラセンオイル |
18 | 3 | アントラセンオイル、アントラセンペースト、軽留分 |
19 | 4 | アントラセンオイル、アントラセンペースト、留分 |
20 | 5 | アントラセンオイル |
21 | 6 | アントラセンオイル、アントラセンペースト |
22 | 7 | フタル酸ジイソブチル |
23 | 8 | アルミケイ酸、耐火性セラミック繊維 |
24 | 9 | ジルコニアアルミケイ酸、耐火性セラミック繊維 |
25 | 10 | クロム酸鉛 |
26 | 11 | 硫酸モリブデン酸クロム酸鉛、モリブデン赤、C.Iピグメントレッド104 |
27 | 12 | 黄鉛、C.Iピグメントイエロー34 |
28 | 13 | 2-クロロエチル |
29 | 14 | 高温-コールタールピッチ |
30 | 15 | アクリルアミド |
(第三次) 2010年6月18日 | ||
31 | 1 | トリクロロエチレン、トリクレン |
32 | 2 | ホウ酸 |
33 | 3 | 四ホウ酸ナトリウム |
34 | 4 | 四ホウ酸二ナトリウム |
35 | 5 | クロム酸ナトリウム |
36 | 6 | クロム酸カリウム |
37 | 7 | クロム酸アンモニウム |
38 | 8 | 二クロム酸カリウム |
(第四次) 2010年8月30日 | ||
38 | 1 | 1,2,3-トリクロロベンゼン |
39 | 2 | 1,2,4-トリクロロベンゼン |
40 | 3 | 1,2,5-トリクロロベンゼン |
41 | 4 | 硫酸コバルト(Ⅱ) |
42 | 5 | 硝酸コバルト(Ⅱ) |
43 | 6 | 炭酸コバルト(Ⅱ) |
44 | 7 | 五酸化二ヒ素 |
45 | 8 | 2-メトキシエタノール、メチルセロソルブ |
46 | 9 | 2-エトキシエタノール、セロソルブ |
47 | 10 | 三酸化クロム、無水クロム酸(Ⅵ) |
48 | 11 | 三酸化クロムおよびそのオリゴマーから生成される酸(クロム酸、二クロム酸・重クロム酸、クロム酸・二クロム酸のオリゴマー) |
(5)<登録に当たって要求される情報>
欧州化学庁に登録するために必要な項目は次のような内容です。
相当なデーター量で、作成にはかなりの費用と時間がかかります。
(1)物理化学的性状に関する情報 | |
融点・凝固点 沸点 相対密度 蒸気圧 表面張力 水溶解度 分配係数 引火点等 |
|
(2)人健康への有害性(毒性学的情報) | |
刺激性(皮膚、眼) 感作性(皮膚) 変位原生 急性毒性 反復投与毒性 生殖・発生毒性 トキシコキネステック 発がん性 |
|
(3)環境影響(生態毒性学的情報) | |
水性生物毒性試験 生物的分解性 加水分解性 分解生成物の特定 環境中運命および挙動 陸生生物毒性試験 鳥類毒性試験 |
(6)<制限物質>
認可物質とは違って、使用が制限される物質です。
認可対象物質と同じように有害な物質であるが、少し認可対象物質とは取り扱いが違っています。
これは認可の対象にはなりません。
現在、以下の物質が決められています。
1 トリクロロベンゼン
2 トルエン
3 カドミウム
4 ベンゼン
5 アスベスト繊維
6 ポリ臭素化ビフェニール
(7)<製品に含有される化学物質の管理>
REACH(リーチ)により、製品に含有される化学物質の規制が進むにつれて、製品を
生産する企業としては、製品に含有する化学物質が高懸念物質で無いことを確認することが必要になってきます。
その為には、製品にはどの様な化学物質が使われているのかを管理する必要があります。
製品は色々な部品から成り立っているので、その部品の調達先に対してその部品の中の化学物質について、情報をもらう必要がでてきます。
その時の注意事項としては、つぎのような項目があります。
(8)<化学物質管理の重要事項>
化学物質の管理をするためのは、化学物質のデーターベースが必要になってきます。
化学物質のデーターベースを作るに当たって、事前に考えておかなければならない事項をまとめてみました。
(1)目的を明確にする。 | |
何のために製品に含有される化学物質の情報を集めるのか。またその情報をどのように活用するのかをはっきりさせる必要があります。 そのことによって、どこまでの精度の情報を集めるのか、すなわち、ppm単位で集めるのか、%単位で集めるのか、どの化学物質を対象するのかがはっきりします。 また、自社で分析するのか、購入先からデーターをもらうのかも決める必要があります。 |
|
(2)ノウハウやパテントに対する先方との取り決めをする。 | |
どんな化学物質が入っているかは、先方のノウハウやパテントとの関係で調達先から情報がもらえない場合があります。 そのために、秘密保持契約書や取りきめ事項を文章にして双方で納得する必要があります。 情報入手先に、十分に説明する必要があります。 |
|
(3)化学物質のデーターベースの設計を行う | |
化学物質のデーターベースを作るに当たって、活用を考えたフォーマットにする必要があります。 最終的なデーター量を考えて、どのようなデーターベースソフトを使うかを考え必要もあります。 また、項目ごとのデーターの大きさ考えなくてはなりません。 検索する場合どの項目で検索するのか、並べ替えをするのかも事前に決めておく必要もあります。 また、化学物質名の統一は必ず必要です。これもかなり難しい内容を含んでいます。 同じ化学物質であっても呼び方が何種類もある場合や略号で表されている場合もあります。 CAS(キャス)番号が分かれば必ず名前と同時に記入しておく必要があります。 CAS(キャス)番号が分かれば、物質が特定できます。 |
|
(4)国際化を考えておく | |
これからは国際化がますます進んで行くと思われるので、そのこと考えておく必要があります。 まず、化学物質名は日本語と英語は必ず必要です。場合によっては中国名も必要になる場合もあります。 化学物質名を日本語から英語に、英語から日本語に翻訳するのは思っている以上に難しいです。 |
|
(4)データーベースの運用を考えておく | |
化学物質管理は息の長い仕事なので、5年後、10年後を考えてどのように運用していくかを決めておく必要があります。 担当者が移動したり、部署が変わったりします。 中心の人が変わったために、その後の運用が混乱する場合もあります。 それと、化学物質のデーターベースはコンピューターの知識と化学物質の知識法律の知識等多岐にわったいます。 これらの知識を1人の人でカバーするのはかなり難しいです。 そのため、担当者は必ず複数にする必要があります。 |
(9)<まとめ>
REACH(リーチ)は一部の人には良く知られていますが、一般の人ひとへの浸透はまだまだだと思います。
言葉は聞いても、内容がはっきりと理解出来ない人が多いです。
しかし、これから製品に対する化学物質の規制はだんだん強まって行くと思います。
いままで、ROHS(ローズ:電気電子機器に含まれる有害物質の使用制限)だとかとか、ELV(イーエルブイ:廃自動車規制)など個別商品の有害物質の規制がありましたが、今回のREACH(リーチ)は商品を限定せずに、すべて用途の化学物質にたいして何らかの規制をしようとするものです。
実際の効果が出るまでには、かなりの年数がかかると思いますが、今から対策を立てないと化学物質による人の健康や、環境に対する被害はますますひどくなると考えられます。
実際、このような規制を受ける企業側の費用、労力の負担は相当なものですが、やはり対応せざるを得ないと思います。
すばらしい自然はほっておいては実現しません。各自の努力があってのみ実現するものだと思います。
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