トップ>KTRニュース>第53回「プラスチックの添加剤(てんかざい)」について
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プラスチックの添加剤について説明いたします。
今回は、プラスチックと言ってもポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS)などの熱可塑性プラスチック(熱すると軟らかくなるプラスチック)の添加剤について説明させていただきます。
熱可塑性プラスチックは家電製品、自動車、日用雑貨、文具製品等大量に使用されています。
このように熱可塑性プラスチックが大量に使われるようになったのは添加剤による性質の改良も1つの理由と言われています。
(1)<添加剤を入れる目的>
これからは、プラスチックと言えば熱可塑性プラスチックの事だけに限定いたします。
通常プラスチックが使用される所は空気があり(空気があると言うことは酸素があると言うことです。)太陽光や照明の光があたります。
と言うことは、光や酸素によって酸化による劣化(れっか:性質が衰えて弱くなる)が起こると考えられます。
劣化の代表としては、プラスチックと少し違いますが輪ゴムがあります。輪ゴムは使用してほっておくと直ぐに劣化して、切れてしまいます。
輪ゴムの劣化には2種類あって固くなってぼろぼろになる場合とべちゃとなって溶けて来るようになる場合があります。
どちらも高分子(プラスチック)の代表的な劣化です。
そのために、これらのプラスチックの劣化を防ぐために酸化防止剤と言う添加剤を入れるのが普通です。
(プラスチックの劣化)
熱可塑性プラスチック-プラスチィックの成分(モノマー)が鎖(くさり)状に並んでいる。
(2)<添加剤によるプラスチックの改良点>
プラスチックに添加剤を入れることにより、次のような改良を行います。
1 | 加工性改良 | 樹脂が金型に流れやすくします | ||
2 | 耐侯性及び耐久性改良 | 紫外線吸収剤 | ||
3 | 耐熱性改良 | 架橋剤、硬化剤、充填剤 | ||
4 | 強度、弾性率、衝撃性改良 | 充填剤 | ||
5 | 柔軟性、Tg低下改良 | 可塑剤 | ||
6 | 耐摩性、摩擦改良 | 滑(かつ)剤 | ||
7 | 表面特性 | アンチブロッキング剤 | ||
8 | 帯電防止、導電性改良 | 界面活性剤、帯電防止剤 | ||
9 | 難燃性改良、不燃性改良 | 難燃剤、充填剤 | ||
10 | 透明性改良 | 核剤 | ||
11 | 軽量化改良 | 発泡剤 | ||
12 | 易分解性 | 分解性ポリマー | ||
13 | 着色 | 着色剤、分散剤 | ||
14 | コストダウン | 安価な充填剤 |
(3)<添加剤の問題点>
添加剤は、主成分の樹脂にくらべて量としては少量ですが、樹脂の性質を大きく改良します。
しかし、添加剤を入れることにより、逆に次ぎの2点の問題点が出ます。
(A)添加剤の安全性の問題
プラスチックに添加剤を入れた場合、添加剤その物の安全性が問題になります。
安全性としては、大きく3つの安全性に分かれます
A.経口安全性
口から入る場合
B.吸引安全性
蒸気として吸い込む場合
C.経皮安全性
経皮にも2つあり、皮膚から吸収するばあいと、皮膚その物のかぶれや、
感作性(皮膚アレルギー)があります。
(B)添加剤のブリード(表面へのしみだし)の問題
添加剤を入れる樹脂との混ざり具合や量によって、
プラスチックの使用中に表面にしみだしてきて、
目的の効果が無くなるとか、表面に粉状の物が出てくるとかべたつくなどがあります。
(4)<代表的な添加剤の効果と代表的な成分>
添加剤の種類ごとの働きと、化合物の説明をいたします。
使用される化学物質の名前を列記します。
A.酸化防止剤の種類
(イ)-フェノール系化合物
(ロ)-硫黄系化合物
(ハ)-リン酸エステル系化合物
(ニ)-金属不活性剤B.可塑剤(かそざい)の種類
プラスチックを軟らかくします。
可塑剤は透明な油のような液体です。
(イ)-フタル酸エステル系化合物
(ロ)-アジピン酸エスレル系化合物
(ハ)-クエン酸エステル系化合物
(ニ)-リン酸エステル系化合物
(ホ)-エポキシ系化合物C.安定剤
使用時、光や熱による劣化や着色を防ぎます。
(イ)-有機スズ系化合物
(ロ)-エポキシ
(ハ)-金属石けん系化合物D.紫外線吸収剤
紫外線によるプラスチックの分解や劣化(れっか)を防ぎます。
(イ)-ベンゾフェノン系化合物
(ロ)-ベンゾトリアゾール系化合物
(ハ)-ベンゾエート系化合物E.滑剤(かつざい)・離型剤(りけいざい)
成型品を金型から取りやすくします。また、製品の表面をきれいに仕上げます。
(イ)-脂肪族炭化水素系化合物
(ロ)-高級脂肪酸系化合物
(ハ)-高級脂肪酸アルコール系化合物
(ニ)-脂肪酸アマライド系化合物F.帯電防止剤(たいぜんぼうしざい)
帯電防止剤によって、プラスチック製品にゴムやほこりが付くのを防ぎます。
プラスチックの中に界面活性剤を入れると、界面活性剤がプラスチックの表面に水の層を作りますので、帯電性が改良されます。
(イ)-界面活性剤(かいめんかっせいざい)
(ロ)-非イオン系化合物
(ハ)-アニオン系化合物
(ニ)-カチオン系化合物G.充填剤(じゅうてんざい)
製品の強度アップ、不透明な製品を作る、製品の重量をふやす目的で使用される。H.着色剤
製品に色を漬けます。
いろんな顔料が使われます。I.難燃材(なんねんざい)
プラスチックを燃えにくくします。
ブラウン管式テレビのように中に高圧電源がある場合ケースが高温になる場合があります。その時ケースが発火しないようにします。
臭素系の難燃剤が多く使われていました。しかし、RoHS規制で難燃剤のPBB,PBDEの使用が禁止されました。
しかし、ヨーロッパでは禁止されましたが、アメリカでは火災の防止のほうが大事だと言うことで禁止していません。
(イ)-ハロゲン(臭素、塩素)化合物
(ロ)-リン系化合物
(ハ)-無機系化合物
(5)<添加剤の分析方法>
各種の目的で、プラスチックに添加剤が入っています。
プラスチック原料 → プラスチックの成型 → アセンブル → 最終製品 → ユーザーのように製品が作られユーザーにとどけられます。製品を使うユーザーは製品の中に有害な物質が入っていないという前提で使っています。
もし、プラスチックの原料に有害な物が入っていても分かりません。そのため最終製品を出しているメーカーは事前に有害な物が入っていないことを確認する必要があります。確認方法としては、プラスチックの原料を作っている所や、プラスチックを成型している所に有害な物が入っていないことを文書等でもらう必要があります。また、場合によっては自社で分析を行う必要が出てきました。
分析には、赤外分析、ガスクロ分析、質量分析、蛍光X線分析、IPC分析等いろんな分析方法があります。
しかし、先ほど説明いたしましたように添加剤には色んな物が使われますし、その量もまちまちです。
最近は分析技術が発達してきて、早く安く分析出来るようになってきました。それでも費用はかなりかかりますし、分析する対象物質が増えてきますので、費用と手間は大変です。
(6)<まとめ>
プラスチックによって、いろんな製品が作られてわたしたちの生活は便利になりました。
昔は、玉子はもみ殻の中にいれられて売られていました。今はプラスチックの入れ物に入れられて売られています。卵が安いのは、このプラスチックのケースが出来て安く早く運ぶことが出来たからだと言われています。
プラスチックに可塑剤を入れることにより、より安くプラスチックを作ったり、見栄えのきれいなプラスチックができたり、安い原料で性質の優れたプラスチックができたりしました。
しかし、安全性の問題や環境に対する影響の問題で使用出来る添加剤の種類が規制されたり、再生する場合のその含有する添加剤の確認等の問題がでてきています。
これからは、添加剤の使用はある程度制限されるのはしかたがないと思います。
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