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第109回目

第109回「布テープの粘着力要素(試料幅、圧着力等の違い等)」について

今回は、条件による粘着力の違いについてまとめてみました。
粘着製品が、被着体(貼り付ける相手側)の違いや、引き剥がし速度などの違いによって、どれだけの粘着力の差が出るかを検証しました。
測定する試験条件のベースは、JIS Z 0237(2009年度版)「粘着テープ・粘着シート試験方法」で、下記の条件になります。

試験環境温度   23±1℃ 50±5%
試料幅   24±0.5mm
試験板   ステンレス板
試験板の洗浄溶剤   アセトン
圧着   質量2000±100gのローラーで2往復
引き剥がしまでの時間   ローラー圧着後1分以内に引き剥がし試験を行う。

上記条件を一部変更していき、粘着力に影響がある要素を調べます。

今回は、布テープで検証していきます。
試験は下記の7パターンです。
(1)試料(粘着体)の違い
(2)試料幅の違い
(3)引張速度の違い
(4)粘着面の乾かし時間の違い
(5)被着体の違い
(6)再粘着の違い
(7)被着体貼り合わせ時間の違い

【 試験結果 】

(1) 試料(粘着体)の違い

  • 先ずは、メーカーが異なる五種類の試料を用意し、通常のJISの基準で試験を実施する。
    測定値から一番粘着力が高い試料で比較検証していきます。
メーカー A社 B社 C社 D社 E社
粘着力(g)/24mm 881 625 774 552 685

試験結果から、A社が一番粘着力が高かったので、A社の布テープで、条件による粘着力の差を下記試験で検証します。

 

(2) 試料幅の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる被着体等はJIS通りで、試料の幅のみ変更しています。
    これは、試料幅に粘着力が比例しているかの検証です。
試料幅(mm) 10mm 20mm 30mm 40mm 50mm
粘着力(g) 433 675 1163 1375 1869
粘着力(g)/10mm 433 338 388 344 374

※黄色で塗った値は、10mm幅に換算した値です。


 

(3) 引張速度の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる被着体等はJIS通りで、試料の引張速度のみ変更しています。
    これは、速度による影響がどれだけあるかの検証です。
引張速度(mm/分) 50mm/分 100mm/分 150mm/分 200mm/分 300mm/分
粘着力(g)/24mm 530 675 695 740 881

 

(4) 粘着面の乾かし時間の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる被着体等はJIS通りですが、試料の粘着面を何処にも貼りつけずに空気中に晒した時間別で試験しています。
    これは、粘着面が乾いて粘着力が時間によってどれだけ下がるかを検証しています。
乾かし時間(分) 10分 20分 30分 1時間 6時間
粘着力(g)/24mm 837 834 866 848 852

 

(5) 被着体の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる試料幅や引張速度はJIS通りですが、貼り合わせる相手である被着体を変更しています。比較用にJISで規定されているステンレスも試験しています。
    これは、被着体による影響を検証しています。
被着体 ステンレス 木材 PP PE ゴム
粘着力(g)/24mm 881 1009 837 758 706

 

(6) 再粘着の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる被着体等はJIS通りですが、ステンレス板に貼り合わせる前に、別のステンレス板に貼って剥がす工程(1回から5回)を入れています。
    これは、再粘着によってどれだけ粘着力が低下するかを検証しています。

回数 1回 2回 3回 4回 5回
粘着力(g)/24mm 847 805 812 822 805

 

(7) 被着体貼り合わせ時間の違い

  • 試験環境温度や貼り合わせる被着体等はJIS通りですが、通常はステンレス板に貼り合わせてから1分以内に引き剥がしを行うところを、引き剥がすまでの貼り合わせる時間を変更しています。
    これは、長く被着体に貼り合わせておけば、試料に被着体がなじむかを検証しています。

貼りつけ時間 1分以内 10分後 1時間後 6時間後 1日後
粘着力(g)/24mm 881 1208 1232 1245 1249


 

(8) まとめ

今回の試験の範囲では、試料幅と引張速度が比例して粘着力が伸び、再粘着と被着体への貼りつけ時間は、一定回数又は一定時間を過ぎると粘着力が横ばいになることがわかりました。
また、粘着面を空気中に晒していても何かに貼りつけなければ、粘着力にはあまり影響がないこともわかりました。
また、JISで規定されている被着体であるステンレス板は、非常に平滑であり尚且つ溶剤にて洗浄しておりますので、被着体の条件としてはかなり良い条件になりますが、PP等の被着体と大きな差がありませんでしたので、平滑で埃などが付着していなければ、粘着性能が高い値のままということもわかりました。

次回は、また別の試料や被着体で実験してみようと思います。

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