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(1)<抜き取り検査とは>
抜き取り検査とはあるロットの中から、ある数のみを抜き出して、それの品質を見て
取りだした元のロットの品質を評価するものです。
元のロットの製品の数を10000個とします。検査するサンプルの数は10個とします。
検査するサンプル(10個)で、元のロット(10000個)の品質を判断します。
元のロットから、検査する製品をランダムに抜き取ります。当然抜き取られたサンプルは良い製品もあれば、不良の製品も抜き取る場合もあります。
本当に、わずかな数のサンプル(10個)で、元のロット(10000個)の品質が判断できるのでしょうか。
これは、次に説明する考え方によって、ある確率で元のロットの品質を判断できることになります。
(2)<抜き取りの例題>
抜き取り検査の基礎をなす考えかたを説明いたします。
抜き取り検査は、n個のサンプルを抜き取ってサンプル1個ずつについて、良品、不良を判定して、不良品の数が決められた個数を超えた時、その元のロット全体を不合格とするものです。
ロット全体の不良率は不明であるが、仮に20%(本当はこんなに大きな不良率はありません)
とします。そうしますと、このロットから10個のサンプルを抜き取った場合、10個中、2個が不良になるはずである。
しかし、ロットの中から10個をランダムに抜き取った場合、良品を取りだす確率は8/10ですが、かならずしも8個良品であるとは限りません。
図1のような、縦、横、高さが30cmの箱を考えます。 次に、箱の中を見ないで、穴から手を入れてボールを1個取り出します。 |
最初は青で、次も青、その次も青でした。4回目は赤でした。 箱の中から、10個のボールを順に取りだすことをもう一度行います。 |
これは、先ほどより赤いボールの比率が大きくなりました。 このような、箱の中からボールを抜きだすことを、根気よく100回行います。 |
(3)<確率の説明>
少し専門的になりますが、確率の話をします。
上の例をさらに続けます。
箱の中には青いボールが8割、赤いボールが2割の割合で入っています。
今は箱の中から青いボールを取りだす確率を P(ピー:0.8)とします
次に、赤いボールを取りだす確率を Q(キュー:0.2)とします。
箱の中から、2個のボールを取りだす場合は、
|
|||||||||||||||||||||||||
上の4つの場合があります。それぞれが起こる確率は | |||||||||||||||||||||||||
青、青 | P × P = 0.8×0.8 =0.64 | ||||||||||||||||||||||||
青、赤 | P × Q = 0.8×0.2 =0.16 | ||||||||||||||||||||||||
赤、青 | Q × P = 0.2×0.8 =0.16 | ||||||||||||||||||||||||
赤、赤 | Q × Q = 0.2×0.2 =0.04 | ||||||||||||||||||||||||
となります。それぞれが起こる確率は | |||||||||||||||||||||||||
青が2つの確率は | P2=0.8×0.8=0.64 | ||||||||||||||||||||||||
青が1つの確率は | 2PQ=2×0.8×0.2=0.32 | ||||||||||||||||||||||||
青が0の確率は | Q2=0.2×0.2=0.04 | ||||||||||||||||||||||||
(合計 1.00) | |||||||||||||||||||||||||
そして、上の組合せがすべての組合せをあらわしているので、 3つの確率の合計は、必ず1になります。 式にしますと、次のように表せます。 |
|||||||||||||||||||||||||
P2 + 2PQ + Q2 =1 |
|||||||||||||||||||||||||
この式を書きなおすと | |||||||||||||||||||||||||
(P + Q)2=P2 + 2PQ + Q2=1 |
|||||||||||||||||||||||||
になります。 | |||||||||||||||||||||||||
以上はボールを2個取り出す場合でしたが、 ボールを3個取り出す場合はつぎのようになります。 |
|||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
青が3つの確率がP3、2つの確率が3P2Q,1つの確率が3PQ2、全部が赤の確率がQ3です。 | |||||||||||||||||||||||||
P3+3P2Q+3PQ2+Q3=1 |
|||||||||||||||||||||||||
であると同時に | |||||||||||||||||||||||||
(P+Q)3=P3+3P2Q+3PQ2+Q3=1 |
|||||||||||||||||||||||||
となります。 |
(4)<取り出すボールを10個にした場合>
上のように、箱から取り出すボールの数を10個に増やすと、次のようになります。
赤ボールの数 |
代表的な組合せ |
組合せの数 |
割合 |
||||||||||
nCr |
|||||||||||||
0個 | 青、青、青、青、青、青、青、青、青、青 | 1通り | 0.00098 | ||||||||||
1個 |
|
10通り | 0.00977 | ||||||||||
2個 |
|
45通り | 0.04395 | ||||||||||
3個 |
|
120通り | 0.11719 | ||||||||||
4個 |
|
210通り | 0.20508 | ||||||||||
5個 |
|
252通り | 0.24609 | ||||||||||
6個 |
|
210通り | 0.20508 | ||||||||||
7個 |
|
120通り | 0.11719 | ||||||||||
8個 |
|
45通り | 0.04394 | ||||||||||
9個 |
|
10通り | 0.00977 | ||||||||||
10個 | 赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤 | 1通り | 0.00098 | ||||||||||
合計 | 1024通り | 1.00000 |
これを式で表しますと、つぎのようになります。
この合計は必ず1になります。 この内、nCrはn個の中からr個取り出す組合せの数を表します。 これも式にしますと、次のようになります。 nCr = n!/r!×(n-r)! |
||
C:コンビネーション(Combination(組合せ)のCである) !:階乗(かいじょう:nが大きくなるとn!が急に大きくなるので |
||
驚いてしまって、ビックリマークが使われている) n!=1×2×3×4×…×n |
今、青ボールの割合は0.8(P)、赤ボールの割合は0.2(Q)なので、上の式に代入してみます。
この計算は大変なので、計算していませんが、もし興味がある方は計算してください。
この合計は1になります。
たった10個抜き出すだけでも、膨大な計算になります。N数が80個になったらどのようになるのでしょうか。気が遠くなります。
(本当は簡易式があり、それで計算します。)
各々の値が、箱から10個取り出した場合の、赤いボールが1個の場合、2個の場合・・・・10個の場合の確率を表します。
赤いボールが2個の確率が一番多くなります。
(5)<抜き取り検査>
今までは、青いボールと赤いボールと言っていましたが、ここで品質管理の話に言いかえていきます。
最初の箱は検査ロットと言います。
青いボールは良品
赤いボールは不良品
10個を取りだすのは、サンプル数が10という意味です。
全数検査しない限り、全体の不良率は分かりません。
通常は全数検査をすることは費用と手間の関係で難しいので、抜き取り検査の結果で、元のロットの不良率を推定して、そのロットを合格にするのか、不合格にするのを決めます。
箱の中のボールを取りだす例からも、抜き取り検査ではロットの本当の不良率は分かりません。
しかも、通常は抜き取りを1回しかしません。検査する数も元のロットの数に比べて極めて少数です。
こんなことで、元のロットのことがわかるのでしょうか。
サイコロをふった場合、次にどの目がでるかはだれも分かりません。ただ、サイコロを1000回
ふった場合は、おそらく1から6までの目がほぼ均等に出るだろうと予測できます。
これと同じように、サンプルの結果は元のロットと同じような比率になるだろうとは予測できます。
ただ、確実に同じとは言えず、ある確率で同じような結果がでると考えることができます。
(6)<まとめ>
ある人は、抜き取り検査は20世紀最大の発明と言っています。大量生産で均一な品質のものが作れるのは、抜き取り検査が発明され、それが実施されたためだそうです。
あまり表面にはでてきませんが、我々が今の豊かな生活がいとなめるは、抜き取り検査が発明されためと考えることもできます。
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