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(1)<周期律表>
今回は「周期律表(しゅうきりつひょう)と蛍光X線分析(けいこうえっくすせんぶんせき)」について説明いたします。
蛍光X線分析は、原子の電子の並び方によって原子を特定しようとするものです。原子の電子の並びかたと言えば、周期律表になります。
そこで、周期律表(しゅうきりつひょう)と蛍光X線分析との関係について説明いたします。
まず、周期律表について説明します。周期律表は、英語では、言葉どうり Periodic(周期的) Table(表)と言います。
元素をその重さの順(電子の数順)に並べると、ある周期ごと(8個づつ)に良く似た性質が表れることをメンデレーエフが発見しました。最初の水素とヘリウムは別ですが、その後の元素は8個ごとに良く似た性質の元素が表れます。
これは、元素の一番外側の電子の数によって、原子の性質が決まることを表しています。
下に、代表的な周期律表を表示します。
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(2)<周期律表と蛍光X線分析の関係>
蛍光X線分析とは、原子にX線(エネルギーの高い電磁波です)を照射して、原子から帰ってくるX線を調べることによって、その原子の種類とその量を測定することです。銅 | 青緑色 | リチウム | 深紅色 | |
バリウム | 黄緑色 |
蛍光X線分析も、これと同じことだと考えてください。
バーナーの時は熱を加えて原子にエネルギーを与えて、可視光線を出させたわけですが、蛍光X線分析では、熱よりエネルギーが高いX線を照射して、エネルギーの高い蛍光X線を出させて、それを測定するわけです。
原子を励起させると言いましたが、正確には原子の中の電子にエネルギーを与えて、電子の軌道を上げることです。
エネルギーを与えられて、軌道を変えた(軌道が上にあがる)電子は次にエネルギーを放出して(蛍光X線をだす)元の軌道に戻ります。そのエネルギーの差に相当する蛍光X線をだします。
放出する蛍光X線のことを詳しく知るために、原子の中の電子の状態についてもう少し詳しく知る必要があります。
電子の状態を調べるのに周期律表が必要になります。
(3)<原子の中の電子の状態>
原子モデルとしては、下記のような中心に原子核があり周りを電子が回っているモデルを考える人が多いと思います。それをボーアモデルと言います。
太陽系の中心に太陽があり、周りを水星、金星、地球、火星、木星等の惑星が回っているモデルです。
これは、原子をイメージするには良いモデルなのですが、蛍光X線を理解するには少し単純化しすぎた所があります。
電子 | ||
内側より、K殻、L殻、M殻と呼びます (A殻より始めるとそれより内側の殻が見つかると困るので、K殻より始めた) |
(4)<電子の種類>
原子の中の電子はある一定の軌道の中を非常に速いスピードで動きまわっています。
電子が原子核のまわりの円軌道を周回する、ボーアモデルというのは、少し粗い近似です。
電子は原子核の周りをまわっています。しかし、不規則に回っているわけではなく、一定の軌道を回っています。
軌道の名前一番内側から、
殻の名前 | 電子の数 | 電子の累計 | 電子の数の計算式2n2 | ||||
K殻 |
2個 |
2個 |
2×1=2個 | ||||
L殻 |
8個 |
10個 |
2×2×2=8個 | ||||
M殻 |
18個 |
28個 |
2×3×3=18個 | ||||
N殻 |
32個 |
60個 |
2×4×4=32個 | ||||
O殻 |
50個 |
110個 |
2×5×5=50個 | ||||
P殻 |
72個 |
182個 |
2×6×6=72個 | ||||
Q殻 |
98個 |
280個 |
2×7×7=98個 |
と言われる軌道を回っています。
K殻は1つだけ、L殻は3つの副殻に分かれています。M殻は5つの副殻に、N殻は7つの副殻に分かれています。
副殻の形状はs、p、d、fと分かれていて、その形は違います。
K殻には電子が2個ありますが、これは1s軌道だけにあります。
L殻には電子が8個ありますが、すべて同じ軌道にあるのではなく、2s軌道に2個、2px軌道に2個、2py軌道に2個、2pz軌道に2個というふうに分かれて入っています。
M殻は18個の電子がありますが、これはL殻よりさらに複雑で、3s軌道に2個、3px軌道に2個、3py軌道に2個、3pz軌道に2個、3dxy軌道に2個、3dyz軌道に2個、3dzx軌道に2個、3dz2に2個、3dx2-y2軌道に2個というふうに分かれています。M殻は、9個の軌道から出来ています。
殻は内側ほどエネルギーが低いので、通常は一番内側から電子が入って行きます。
しかし、ランタノイド族やアクチノイド族では必ずしも、このとうりではありません。
電子の殻に入る順番
1s → 2s → 2p → 3s → 3p → 4s → 3d → 4p → 5s → 4d → 5p |
(原子の中の電子の配列表) |
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注:数字は電子の数を表します。 |
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電子の最外殻に入っている数 この数字が原子の性格を表す |
(5)<電子の性質>
さらに、電子の性質を詳しく説明いたします。
電子のエネルギーレベルは次の4つの量子レベル(特定のとびとびのエネルギーレベル)しか取ることはできません。
(記号) | ||
(1)主量子数 | n |
広がりをあらわす 1、2、3、4 |
(2)方位量子数 | l |
形状をあらわす s、p、d、f |
(3)磁気量子数 | m |
1つの方位量子数lに対して、(2l+1)個の磁気量子数であらわされる電子の状態が存在し、原子が磁場の中に置かれたとき、わずかにエネルギーの異なる(2l+1)個の順位に分裂する |
(4)スピン量子数 | s |
電子が回転自転していることに基づく |
1つの原子において、それぞれの電子はこのような4種の量子数で決まるただ1つの状態しかとることができません。
これを、パウリの排他原理と言います。
パウリの排他原理によって、電子はすべての量子数の異なった状態に入っていきます。
多電子原子では、電子のもつエネルギーは主量子数nと方位量子数lによって決まり、そのエネルギー順位は、記号の組合せで表すことができます。
(6)<新しい量子数>
蛍光X線分析のチャート(元素ごとのピークの山が書かれたもの)分析では、さらに詳しい内容が必要になります。
全角運動量子数 j という新たな量子数を導入して、電子の状態を記述する必要があります。
これは電子のスピンベクトルと軌道の角運動ベクトルのカップリング(相互作用)によるもので、以下のベクトル和で表される電子状態です。
j= l + s |
L殻の電子は電子移動に関して、L1,L2,L3の3つの順位があり、M殻の電子は、M1,M2,M3,M4,M5の5つの順位が存在します。
(7)<蛍光X線のピーク(山)>
蛍光X線分析では、原子の電子にX線を照射して電子を上の殻にあげます。次に上の殻に上がった電子は蛍光X線を放射しながら元の殻に落ちてきます。
K殻から、L殻に上がる場合と、M殻に上がる場合があります。また、L殻からM殻やN殻に上がる場合もあります。
そして、L殻はL1,L2,L3という風に3つに分かれています。M殻はM1,M2,M3,M4,M5という風に5つに分かれています。そして、N殻はN1,N2,N3,N4,N5,N6,N7と言う風に7つに分かれています。
したがって、1つの原子でもいくつものピークがでます。ただ、すべてが同じ大きさのピークにならないので、代表的なピークで原子の種類を決めています。
原子が違えば、他の電子との相互作用で、蛍光X線のエネルギーが違うので、原子の種類の特定が可能になります。
(8)<まとめ>
電子と言っても非常に複雑で、なかなか理解しにくい所があります。蛍光X線分析以外でもICP(アイシーピー)分析とか、原子吸光分析(げんしきゅうこう)とかがあります。これらは基本的には、原子の中の電子の状態を調べるものです。
分析技術の発展が科学の発展の基礎になっています。それと同時に理論的な原子の構造モデルの発展が分析技術の発展につながっています。
分析技術は外からは分かりにくいですが、社会の発展の基礎をになっています。
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