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第59回目

第59回「プラスチックの見分け方(赤外分析)」について2

赤外分析とは赤外線(せきがいせん)を物質に照射して、物質が吸収した赤外線の周波数(エネルギー)から物質の構造を決めるものです。
赤外線は電気こたつで使われている物と同じです。いわゆる熱線と言われています。
赤外線が物に当たると、それが物に吸収されて熱に変わります。
赤外線は赤の外の線と書かれるように、可視光線(人間が目で見える光)より低いエネルギーです。
赤外線は英語では(infrared:インフラレッド)と言われます。
赤の次と言う意味です。略してIR(アイアール)と呼ばれることが多いです。

(1)<赤外線のエネルギーの表し方>
赤外分析の時のエネルギーの表しかたは1cm当たりのいくつの波があるかで表します。
波の数が多いほどエネルギーが高くなります。
赤外線の場合は1cm当たりの波の数で表しますが、それより波の数の多い(エネルギーが高い)場合は可視光線になります。
可視光線(目に見える光)や紫外線(可視光線よりさらにエネルギー高い)は1cm当たりの波の数でなく、波長で表します。(波の長さで表します。:通常nm(ナノメーター)で表します。

(2)<プラスチックの赤外チャート図>
次に代表的な5つのプラスチックの赤外分析結果のチャート(図)を表します。
これはあくまで弊社がサンプルを購入して測定したものです。
測定機やサンプルそして測定方法によってチャートが変化する場合があります。
あくまで参考チャートとして見てください。
今回測定しました代表的なプラスチックは次の5つです。

  1. ペット樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)
  2. PP樹脂(プロピレン樹脂)
  3. 塩ビ樹脂(塩化ビニル樹脂)
  4. PE樹脂(ポリエチレン樹脂)
  5. アクリル樹脂(メタアクリル樹脂)

このチャート(図)の見かたですが、横軸はcm-1(カイザーと読みます)で1cm当たりの光の周波数を表しています。周波数は波の数でこの数字が大きいほどエネルギーが高くなります。
赤外線は4000cm-1(カイザー)から400cm-1(カイザー)の間です。
4000cm-1(カイザー)は赤い色(可視光線:目に見えるひかり)の隣です。
4000cm-1(カイザー)はエネルギーが高いので、分子の中の原子同士の距離の伸び縮みを起こします。


1. ペット樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)
  チャート図はクリックで拡大表示

 


2. PP樹脂(プロピレン樹脂)
  チャート図はクリックで拡大表示

 


3. 塩ビ樹脂(塩化ビニル樹脂)
  チャート図はクリックで拡大表示

 


4. PE樹脂(ポリエチレン樹脂)
  チャート図はクリックで拡大表示

 


5. アクリル樹脂(メタアクリル樹脂)
  チャート図はクリックで拡大表示

 

(3)<ポリエチレンの赤外チャートの見方>
縦軸は赤外線の透過率を表します。下にさがっているところは、赤外線の中のその場所のカイザー(波長)に相当するエネルギーを吸収したことを表しています。
その吸収エネルギーからそれを吸収する物がその測定物の中にあることがわかります。
例として 4. PE(ポリエチレン) を見ますと左側より数字が書かれていますが、これは「エネルギーの場所カイザー」と「透過率」のことを表しています。

このエネルギーの位置と、透過率より、どのような原子の結合かがわかります。
そして、それらの波形より総合して、測定したプラスチックシートが何かが特定できます。
通常は代表的なプラスチックのチャート(図)がすでにあり、それと比較してどんなプラスチックかを判定します。

(4)<官能基団名>
赤外線分析で分かることは、測定しようとしている物質(有機物)の分子の中の構成要素の官能基(かんのうき)が分かることです。
主だった官能基団の分子式と名前を挙げてみます。
この官能基を分子中に含むと、それの特有のカイザーの所に吸収がでます。
したがって、その吸収がでればその原子団を含むと考えられます。

(分子式)   (呼び名)
NH2ー   イミド
NH2-   アミド
CH3-   メチル
CH3CH2-   エチル
CH2=CH-   ビニル
C6H5-   フェニル
CH3-   メトキシ
ーCOOH   カルボキシ
H2N-   アミノ
ーNO2   ニトロ
ーN=N-   アゾ

(5)<赤外分析の長所>
調べようとする物質が気体、液体、固体のどの状態でも分析が可能です。
と言うことはなんでも分析することが出来ます。
ただ、赤外分析は赤外線を当てて吸収する波長を調べるものですので、赤外線を吸収しない物は調べることはできません。
赤外線はエネルギーのレベルが非常に低いので、有機物で共有結合の振動や回転ぐらいに相当するエネルギーです。
したがって、金属のような金属結合や無機物のイオン結合は結合エネルギーが高すぎて赤外線ぐらいのエネルギーでは調べることができません。
金属の場合はもっとエネルギーの高い蛍光X線分析で調べることになります。

(6)<赤外線分析の欠点>
赤外線分析は有機物の分析、特にプラスチックの分析に適していると言いましたが、プラスチックの場合、主成分の樹脂以外にいろんな添加物が混ざっています。
また、着色している場合は顔料や染料が混ざっています。
赤外分析を行うとこれらのピークも出てきます。
また、黒色は分析が難しいです。

(7)<実際の分析の難しさ>
1つの分子の中でもいろんな原子が結びついて出来ています。そうしますとその原子ごとに色んな吸収が出てきまして、ピークの数が相当多くなります。
そして分析する物質には共通する原子や官能基が多く入っている場合もあります。
したがって、赤外分析のチャートは複雑になり元の分子式を想像するのが難しくなります。

(8)<まとめ>
最近の赤外分析機はコンピュータ化が進んで、測定は簡単になってきました。
また、測定した結果の赤外チャートもコンピュータでその波形と近い物を自動的に探してきて、表示してくれるようになってきました。
しかし、測定条件(サンプルの状態、厚さ、添加物、測定機の種類等)でチャートの形が変わるので最後は人が見て判断をする必要があります。
従って、赤外分析はそれを判断する人の能力が必要になります。
ただ、いつも同じ機械で同じ条件で測定する場合は、それが以前測定した物と同じものかを判断するのは比較的簡単にできるようになってきました。

<御参考>
弊社ではプラスチックフイルムの赤外線分析のご依頼を御受けしております。
費用は1試料約1万円。納期は約1週間です。
ただし、添加物の多い物、色が黒い物、貼り合わせている物(ラミネート)は測れない場合があります。
フイルムの材質の特定が出来ない場合は費用はかかりません。
ご依頼をよろしくお願いいたします。

 

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