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第60回目

第60回「赤外分析」について

赤外分析については過去2回(第21回、第59回)について説明して来ました。
これらは、あくまで本の紹介で説明したものです。
実際の商品を買って試験体にして、それを分析したものではありませんでした。
今回は実践について入っていきたいと思います。
実際にサンプルを買って、実際に試験機を使って測定したいと思います。

 

(1)<赤外分析機を実際に使う>
赤外分析を実際に使うのはどんな時があるだろうか。
実際に試験機を使うことはほとんど無いと言っていいと思います。
外部の試験機関に依頼する場合も、分析だけを依頼して自分で使うことはほとんど無いとおもいます。
試験場は依頼者に使われるのは機械の故障や能率の関係で迷惑がって使えない事になります。
今回はあえて自分で使ってみることにしました。
商品の包装に使われているビニールの袋がどんなプラスチックで出来ているか調べて見ることを考えてみました。
まず、フィルムを2cm角にきります。
つぎに、それをARTの分析機にのせます。
そして、FTIR(フーリエ変換赤外分析機)の本体をうごかします。

 

(2)<赤外分析の利用>
赤外分析はフィルムを破壊せずに分析することができます。
赤外線をフィルムの面に照射するだけで調べることができます。
赤外線は波長ごとに決まったエネルギーを持っています。
500cm-1から4000cm-1ぐらいの波長である。これは、1cm当たりの波の数です。
これは振動数の数が大きいほどエネルギーが大きくなります。
振動数が大きな所は振動エネルギーで、それより小さいエネルギーは偏角運動です。
波長毎に高分子の代表的な分子式が決まってます。

 

(3)<ポリエチレンの赤外スペクトル>
ポリエチレンには、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの2種類があります。

今回のサンプルは高密度ポリエチレンか低密度ポリエチレンか分からない
シートですが、赤外にかけてみることによりはっきりすると思います。
基本的な構造は同じ様なので近い構造が出るとおもいます。

 

(4)<ポリエチレンのIR>
実際の赤外チャートを見てみます。
これは市販の定規の袋の赤外チャートです。
下の線は振動数である。cm-1の単位が書いてある。
これはカイザーと言い、1cm当たりの赤外線の数である。
最初の3000の上に大きなピークがあるのがわかる。
これはポリエチレンの構造のC-H2、C-H3結合をあらわします。
次に、1500cm-1付近あるピークはポリエチレンのC-H結合である。
従ってこれはポリエチレンであることがわかる。

 


透明定規  チャート図はクリックで拡大表示

 

(5)<まとめ>
赤外分析は有機分析の中で最も多く使われるものです。まず赤外線分析にかけてみるかといわれるぐらいに、最もポピュラーなものです。
しかし、チャートを読み解いてなんであるか決めるのは経験と知識がいります。
今回の赤外チャートは10分ほどでしたが、これを使いこなすにはかなりの時間が必要です。
数多くのチャートを見て、場数を踏まなければ知識はふえません。
しかし、非常に便利なので少し努力が必要だとおもいます。

 

<御参考>
弊社ではプラスチックフィルムの赤外線分析のご依頼を御受けしております。
費用は1試料1万円。納期は約1週間です。
ただし、添加物の多い物、色が黒い物、貼り合わせている物(ラミネート)は測れない場合があります。
フィルムの材質の特定が出来ない場合は費用はかかりません。
ご依頼をよろしくお願いいたします。

 

「プラスチックの見分け方(赤外分析)」について1 はこちら

「プラスチックの見分け方(赤外分析)」について2 はこちら

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